大学では空間デザインを学び、アパレル業界を中心に就活していました。面白そうな会社を探していくなかでふと思い出したのが、天神地下街にあったバスコのセレクトショップ「BaobaQu」。Kusakanmuriのストールをベストのように巻き付けたり、花のかたちに飾ったりしているディスプレイが個性的で、印象に残っていたのです。ただし、当時のバスコは従業員を募集していなかったため、本社の電話番号を探すだけで一苦労。それでも「当たって砕けろ」精神で電話をかけ、なんとか面接してもらって、入社することができました。
BaobaQuの販売員を半年ほど経験したあとは、本社の営業チームに異動。Web周りの仕事をしていた方が産休に入るため、私に声がかかったようでした。じつは、販売員はあまり向いていないように感じていたところだったので、その様子を汲み取って異動させてもらえたのは、とてもありがたかったです。しばらくは本社の商品担当も兼務して、在庫管理などと並行しながら、Web周りを見ていくことになりました。
しかし、いまでこそ大きな予算を持つECサイトですが、当時はまだ、売り上げがあまりない状態。バスコは顧客との結びつきが強いブランドなので、リピーター様は多いけれど、新規流入がなかなか伸びていなかったのです。そこで、さまざまな外部のEC運用セミナーを受け、どうすれば新しいお客様に来ていただけるかを自分なりに考えることからはじめました。在庫を整え、Web限定の新規施策を増やすなどとさまざまな手を打ちながら、次に思いついたのは、広告にもっと力を入れること。それまでは長いあいだ少額で運用してきましたが、社長にプレゼンして予算を確保し、本格的な広告施策をスタートしたのが2019年ごろのことです。少しずつ軌道に乗り出したECサイトに、広告という起爆剤が加わって、ぐっと勢いがつきました。
Interview
ECサイトのために、いま私は何ができる?
考えて行動に移して、結果が出るのが面白い
営業 EC店長 / 森 香織
ECサイトを軌道に乗せるための、新たな挑戦
Webとリアルの相乗効果で、お客様に喜んでもらいたい
その後のコロナ禍でも、ECサイトの存在感は増すばかり。実店舗がすべて休業となったときには、少しでもお客様に笑顔と楽しみを届けたくて「Cheer up」という全品20%オフのオンラインセールを実施しました。これがものすごく好評で……わずか12日間で1ヶ月分以上を売り上げたのです。そこまでの反応がいただけるとは想定していなかったため、いままでとはまったく違う販売量に耐えうる体制を整えておらず、バックヤードはてんやわんや。「すごく売れています!」「出社できる人、来てください!」と社内で声をかけあい、在庫や棚卸、配送をなんとかこなしていきました。いま思えば、あのタイミングでオンラインセールの威力やいま足りていない仕組みを体感できた経験は、のちのECサイト発展に大きく貢献したと感じています。また、ご購入くださった方々には、実店舗にいらしていたお客様も多かったため、みなさまのバスコ愛を感じることができたのもうれしかったです。
そもそも、実店舗にもECサイトにも訪れるお客様が多いのは、バスコの特徴かもしれません。だからこそECサイトで気を付けているのは、Webならではのコンテンツ作り。たとえば、5月の創業祭に開催するフェアでは、自社限定のアイテムを販売しています。2022年は、定番人気のマオパンツを久留米絣で制作しました。Webではその魅力を伝えるべく、久留米絣の工場を訪れたレポート動画や素材の良さを伝える読み物、該当アイテムを取り入れたコーディネートなどを紹介。Webにしかない情報は、店頭で販売員がお客様とお話するときのツールにもなっているようです。
4年前からは、ECサイトの店長を務めています。最近では、お買い物いただいたお客様に手書きのお礼メッセージをつけてみたり、社長が長らく綴っていた「季節の言葉」をWebサイトでも公開してみたり、小さな施策もいろいろと試しています。Webは、自分たちがとったアクションの結果が良くも悪くも見えやすいのが面白いところ。数字を意識して、できることを自分たちなりに考えながら動くほど、やりがいが増していくんです。
バスコの過渡期、自分なりの貢献をしていく
それにしても、バスコの風通しの良さは独特だなと思います。思いついたアイディアは社長に直接提案ができるし、筋が通っていれば基本OKが出る。だからこそ、社員たちが一人ひとり、ブランドにとって必要なゴールや手段を考えることに集中できるのです。たとえば、これまで内製していたコレクションブックの写真も、スタッフの提案からプロのモデルやカメラマンに依頼するようになりました。現状の環境を改善したいと思ったときいくらでも改善できるのが、バスコのいいところです。バスコに入ったら何ができる? と聞かれたら、なんでもできる。ただし、みずから動かなければ何も変わらないまま、時が過ぎていく厳しさもあります。
知識も経験もないなりに奮闘してきたことが実を結び、いま、ECサイトの売り上げは右肩上がりです。広告を本格運用する前に比べれば、3倍近く売れるようになってきました。ずっと漠然と掲げていた「目指せ一億円」という目標も、少しずつ手が届く数字になりつつあります。あと2年のうちにその大台に乗れるよう、先日も新たな企画を社内に提案したばかりです。この波と並行して、バスコ全体のイメージアップを図るために、現在あるいくつものブランドを改めて区分けし、際立たせていきたいとも考えています。
学生のときには想像もしていなかった仕事ですが、仲間と協力しながら毎日新しいことに挑戦できるような環境だからこそ、楽しく働けているのかもしれません。いまは、バスコというブランドそのものも過渡期。これまでのお客様にずっと愛し続けてもらえるように、また、新しくバスコを愛してくださるお客様にもたくさん出会えるように、変わっていくタイミングです。もっと知識を磨き、経験を身に着け、私にできることを探し続けていきたいと思っています。