通っていた学校の教育方針や、留学していた友人が多かったことから、いつかは自分も外国に出るものだと、漠然と思っていました。学生時代は留学を経験し、大学を卒業してすぐにオーストラリアに渡ったのは、そんな自然の流れ。ローカルの英語学校に通い、ほぼゼロから英会話を身に着けたあとは、お花の専門学校に通いました。海外でも身振り手振りをまじえて学ぶことができ、資格も取れるのが魅力的だったんです。その後はしばらくオーストラリアで働き、いろんな方々との出会いがありました。とくに印象的だったのは、世界を股にかけて働いている大手商社の人たち。海外を渡り歩きながらいろんなものを見て、いろんな経験をしている方の話はとても面白くて……私も広い世界を見ながら仕事がしたいと、強く感じたものでした。帰国後に切り花の輸入卸をする会社に入ったのは、そうした影響があったのかもしれません。
バスコに出会ったのはそれから数年が経ち、地元の福岡に戻っていたころ。英語が使えて、フットワーク軽く海外出張ができる人材を探していると聞き、飛びつきました。お洋服も好きだし、ここでなら福岡からでも、また世界とつながる仕事ができるように感じたのです。ただ、アパレル会社に入る人はとてもおしゃれなイメージがあったので、そこは少し不安でしたね。だけど入ってみたら、見た目だけのおしゃれよりも、自分でいろんなことを開拓していく強さや好奇心のほうがずっと必要だったんです。アパレル会社に入ったという感覚は、いい意味であまりありません。いろんなことができる会社の企画営業職に就いていて、扱うものがお洋服なだけ、だと感じています。
Interview
バスコが前に進むために必要な「何か」を
あらゆる角度から見つけ、
手に入れていく仕事。
営業 マネージャー / 尾石 桂子
世界とつながって、いろんな挑戦ができる仕事を見つけた
敏感なアンテナと、丁寧なコミュニケーションで、次の一歩を切り拓く
バスコの企画営業は、本当に仕事の幅が広いポジションです。会社の年間営業計画や販売施策を取りまとめ、展示会やプロモーションを仕切り、商品構成や生産量の検討、輸入貨物の通関業務にも携わります。大切なことは、いまよりも新しい“何か”を見つけること。それは販売先だったり、面白い素材だったり、工場やPR施策だったり、さまざまです。営業部には8人のメンバーがいるけれど、個々が自立して自分の仕事に打ち込んでいるため、同じ仕事を担当している人はほぼいません。これからのバスコに必要なものをそれぞれが考えて、自分なりのアプローチを進めていくんです。
私は入社してすぐから、インドの工場とのやりとりを担当するようになりました。生産業務が円滑に進んでいくように相手方とコミュニケーションを取り、上がってくる品物をチェックして……現地の方々と信頼関係を築くまでは、なかなかこちらの言うことを聞いてもらえず、苦労も大きかったですね。でも、相手に信頼してもらうには、まず自分を開示することが大事だと考えて、こちらのことを開示するところからはじめたんです。「うちは品質にとてもこだわるから、微調整が多く発生します」「ある意味、厄介な会社ですが、一緒に仕事がしたいです」などと、最初に正直に伝えました。それでも応じてくれて、丁寧に仕事をしてくださる工場とは、ぐっと関係が深まっていったように思います。
そんなふうにバスコは、入社するまでアパレルの経験がなかった私にいろんな仕事を任せ、意見をとてもよく聞いてくれる会社です。初めて社長と一緒にインド出張に行ったときは「この素材をあのデザインにしたいんだけど、どう思う?」なんて、商品に関わる相談までされました。デザイナーでも商品企画でもない私が意見をするのは、もちろんプレッシャー。だけど、バスコに縁の深い東南アジアではバックパッカーをしたこともあるし、それと同じ時期に社長が洋服の仕入れで行っていたなんて話を聞くと、世界の同じ景色を見ていた人と一緒に働いているんだなぁと、うれしくもあって……。日ごろからいろんなアンテナを張って、求められることに応えていきたいと思うんです。
これまで見てきた景色を積み重ねて生まれた、新ブランド
営業職ながら、ブランドの立ち上げも経験しています。きっかけは、会社の売り上げを上げるために、セカンドラインを持とうという声が出てきたこと。概要を考えるうちに「バスコはいま最高のものづくりをしているのに、そのこだわりを削いでリーズナブルなアイテムをつくるなんて、面白くない」と感じてしまい……最終的に、セカンドラインとは真逆の、こだわりをさらに強めた最上級ラインの制作を提案したんです。でも、その企画書を受け取った社長は「応援するからあなた主導でやりなさい」と言ってくれて、責任者を任せてくれました。
そうして生まれたのが「HAVAMATOU」。ヒンドゥー語で「風」をあらわす「HAVA」と、それを「纏う」という意味を掛け合わせています。バスコに入社してから初めてインドに行き、出張を重ねるたびに、現地の素材を使いながらこれまでのバスコになかったものをつくりたい、という思いが湧いてきていました。太陽や風やその香りって、国々によってまったく違うもの。私の好きなインドの風や空気感を、ブランドという形で表現できたら素敵だなと思ったんです。自分がそんな仕事をするなんて考えたこともなかったけれど、動き始めてみれば、これまでの経験や見てきた景色の積み重ねによって生まれた世界観だなと、しみじみ感じます。
こんなふうに、やりたいことは何でも形にできるからこそ、やりたいことが多すぎてキャパオーバーになることも……。だから最近は、自分が考えたことを自分よりも上手に形にしてくれたり、アイディアを膨らませてくれたりするようなメンバーにシェアしていくことを考えるようになりました。そうしたら私はまた次のチャレンジができるし、そんなふうに主体性を持って働く人が増えるほど、バスコのパワーも大きくなっていくはずです。いま力を入れているのは、新しいマーケットを広げること。ご縁を大切に営業してきたこともあって、以前はあまり新規開拓に力を入れてはきませんでした。でも、バスコが新しい物語を生むためには、やっぱり新しいお客様にも出会っていきたいと思うんです。海外での展示会やいままで接点がなかった土地でのポップアップなど、これから試せる手段はたくさんあります。バスコらしさを改めて見つめ直し、ふくらませていくことと並行して、新しい世界とのつながり方も考えていきたいと思っています。